インプラント治療を始める前に
[1] 学術・技術の習得、研鑚の勧め
近年、インプラント治療はオッセオインテグレーションの概念の定着や治療術式のシステム化などにより、高い成功率を得られるようになりました。しかしその高い成功率は、十分な学識と技術を習得した者が、的確な審査、診断、治療を行って初めて得られるものです。術者は常に、インプラント治療に要求される基礎的(病理学、材料学等)および臨床的(外科学、補綴学、歯周病学等)な幅広く高度な学識・技術の習得、研鑚に努める必要があります。
[2] 術前審査と適応の可否・治療計画について
インプラント治療を成功に導くには、まず術前に全身的および局所的審査を綿密に行い、的確な情報を得なければなりません。そして、それらの情報をもとに、適応症の正しい選択と治療計画の立案を行うことが大切です。
◆ 適応の可否
術者は適応の可否を厳密に診断した上でなければ、インプラント治療を行ってはいけません。以下に挙げる項目は、インプラント治療適応の最低条件です。
(1) 患者の健康状態が、精神的にも肉体的にも良好であること。
(2) 骨量、骨質が十分にインプラントを許容できること。
(3) 良好な咬合の再構成が可能な植立部位、方向が得られること。
全身的、局所的な適応可否の詳細については、口腔外科学書等の抜歯ないし小手術の適応、禁忌の項やインプラント学書等を参照してください。
◆治療計画
術前審査から得た情報より治療計画を立てます。主な計画の内容は以下の通りです。
(1) 術前処置(歯周、歯肉、補綴、矯正、外科処置やプラークコントロール等)
(2) 植立インプラントの選択、植立本数、部位、方向
(3) 補綴処置方法
注: 必要な術前処置があれば、インプラント施術前に先立って必ず行ってください。
(1)により歯牙、歯周組織の状態や咬合状態を回復させ、その後に
(2)、(3)を確定することが必須となります。
[3] インフォームドコンセント
術前審査の結果、インプラント治療の適応になった患者には、治療内容に関する説明を十分に行い、同意を得た上で治療に取りかからなければなりません。患者には、術前処置の必要性、手術の内容、術後の経過・維持管理・起こり得るトラブル、治療期間、最終的な回復目標、費用などについて説明してください。患者の治療に対する理解度が、予後を大きく左右させます。
[4]患者管理
患者の口腔内の状態に関しては、手術に先立って術前処置を終了させるとともに、プラークコントロールの徹底と歯石除去により、口腔清掃状態を良好に保たせる必要があります。また、口腔内のみならず患者の全身状態も管理しておかねばなりません。有病者の健康状態の把握はもちろんのこと、健常者にも規則正しい食生活を心がけてもらい、疲労の蓄積や風邪を予防することも大切です。
どうもありがとうございました。